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コラム
2016.07.19
コラム

 

弁護士には使命があります。法律で定められていまして、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」が弁護士の使命です。

琉球新報や沖縄タイムスで広く報じられているように、
現在東村高江で、ヘリパッド建設に反対する住民と、工事を強行しようとする国の間で紛争が起きています。

 

それぞれに立場と主張のある中ではありますが、だからといって、警察が違法な行為をしてよい、ということにはなりません。警察が違法なことまで行い、基本的人権が侵害されそうになっているときは、弁護士はその使命に基づき、人権の側に立ちます。

 

さて、明日の新聞で報じられると思いますが、本日高江近くの新川ダムで、

違法な検問が実施されたようです。

前提となる地理関係を説明しますと、まず、反対している住民の方が座込みをしている場所は県道沿いですが、周辺に建物らしい建物はありません。数㎞走らないと店舗もないので、例えばトイレが近くにありません。最も近くにあるトイレは、新川ダム駐車場の公衆用トイレですが、その周辺も、少しの広場とキャンプファイヤーの施設らしきものがあるだけです。到底、交通違反が多発しているとか、交通事故が多発している、といった場所ではないところです。

 

さて、自動車検問については、3つの類型があると言われています。

1 緊急配備活動としての検問

2 交通検問

3 いわゆる一斉検問

の3つです。

 

1 緊急配備活動としての検問

犯罪が発生して、車で逃走したという通報があったような場合に行われる検問です。刑事ドラマで出てくる「緊急配備を引け!」というアレです。

根拠は警察官職務執行法という法律の2条1項です。一般の職務質問と同じ根拠規定で、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」に対して行うことができます。

今回の件は、通る車を全て止めており、近くで犯罪が発生して車で犯人が逃走した場合でもないので、高江の件にはあてはまりません。

 

2 交通検問

交通違反の予防・検挙のために行われ、整備不良者と認められる場合(道交法63条)や危険防止に必要な場合(道交法61条)に車等を止めるな検問です。

ただでさえ車通りが少なく、交通違反も交通事故もまず起きていそうもない県道や、新川ダムに向かう小道で行う検問にあてはまる類型ではありません。

 

3 いわゆる一斉検問

通る車全てを止めるいわゆる一斉検問です。道路交通法違反も含めた犯罪一般の予防・検挙のために行われるもので、その方法によって適法と違法が別れます。警察側は、警察法2条1項や警職法2条1項を理由にすることもありますが、最高裁判所は、直ちにそれらの条文から、どんな一斉検問でも許される、という風には解していません。判例を引用してみます。

 

最高裁決定昭和55年9月22日
「所論にかんがみ職権によつて本件自動車検問の適否について判断する。警察法二条一項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといつて無制限に許されるべきものでないことも同条二項及び警察官職務執行法一条などの趣旨にかんがみ明らかである。しかしながら、自動車の運転者は、公道において自動車を利用することを許されていることに伴う当然の負担として、合理的に必要な限度で行われる交通の取締に協力すべきものであること、その他現時における交通違反、交通事故の状況などをも考慮すると、警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。原判決の是認する第一審判決の認定事実によると、本件自動車検問は、右に述べた範囲を越えない方法と態様によつて実施されており、これを適法であるとした原判断は正当である。」

 

要するに、まず一斉検問は、「任意手段によるからといつて無制限に許されるべきもの」ではありません。運転する車を止めるそれ自体が、国民の側に一定の不利益を生じさせるからです。

 

許されるのは、次の限度だけです。

「警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。」

 

今回の場合、その実施している場所がそもそも「交通違反の多発する地域等の適当な場所」ではありませんので、この時点で適法とは言い難いものです。

さらに、新川ダムの公衆用トイレは、憲法に定められた表現の自由や自然権である抵抗権の行使をしている住民に広く利用されている一方、他の利用者は皆無という状況ですから(あとは防衛局職員のみ)、ここで行う一斉検問は、表現の自由に過度の萎縮効果を与える恐れの高い行為ですから、特に適法とする根拠がない以上、違法と解するほかないでしょう。
むしろ、このタイミング、この場所で行っている検問は、客観的事情からして表現の自由や抵抗権の行使を萎縮させるとともに、その行使者が誰であるかに関する情報を収集するという、違法な目的で行われている、と見るのが自然でしょう。

 

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