日本弁護士連合会会長が、年末にもかかわらず、糸魚川市の大規模火災に関する会長談話を発表しました。
糸魚川大火災に関する日弁連会長談話(PDF版)
短くわかりにくい部分もありますので、補足説明してみます。
※被災者生活再建支援法の方について補足します。ガイドラインは後日。
まず、東日本大震災や熊本地震などで適用され、被災者の生活再建に貢献した、被災者生活再建支援法という法律に基づく制度があります。
全壊した世帯に、被害時に100万円、再建時に最大200万円の被災者生活再建支援金を支給する制度です。
東日本大震災当時、避難所相談で最も評判がよかったのがこの制度です。
「全てを失ってしまった」としても、生活支援の足がかりになるお金を支給してもらえる、という制度だからです。使い道に制限もありません。
糸魚川市の大規模火災では、多くの方が、何の責もないのに被災し、住まいを失いました。
その被害は深刻かつ広範で、暮らしや地域の復興には、上記のような支援制度の適用が必要だと思います。
しかし政府は、被災者生活再建支援法を糸魚川大火に適用することには消極のようです。
その理由は、以下の2つだと思われます。
1 火元が自然現象ではない
2 被災者生活再建支援法2条1号が定める定義に、大規模火災があげられていない
いまの政府の考えのままにいくと、次のようになります。
1 ストーブが地震で倒れて火事になり、144棟が全焼した場合(地震だから適用あり)
2 ストーブに躓いて倒してしまい、144棟が全焼した場合(人災だから適用なし)
私はこの差は、火元になった家はともかく、それ以外の世帯については不合理だと思います。
何らの責任もないのに住まいを失ったことも、その被害が周辺地域に広がっていることにも変わりはないからです。上記の日弁連会長談話は、以上を踏まえた上で、糸魚川大火への被災者生活再建支援法の適用を求めています。
まず、今回なぜ144棟もの被害が生じたのかと言えば、それは強風があったからだと思われます。
当日の風は気象庁のHPで確認できるのですが、12月22日の糸魚川市には、約14時間もの間、断続的に平均風速10m/s 最大瞬間風速20m/s もの風が吹き続けていました。当然、強風警報も出ていました。さらにこのとき糸魚川市にはフェーン現象が起きており、乾燥した風でした。
言ってみれば、この異常に継続して吹き続けた強風により、ただの火事が燃え広がり、144棟もの被害が生じてしまったということです。
次に、被災者生活再建支援法2条1号は、適用する災害を以下のように定めています。
「一 自然災害 暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害をいう。」
この定めのポイントは二つでして、1つは末尾に「その他の異常な自然現象」という定めがあることです。
このように具体的にいくつか記載した上で末尾に「その他」と定める方法を一般に例示列挙といい、その他の前に書いてあるいくつかの記載はあくまでも「例」で、これに限定する趣旨ではない、「例」以外に適用されることもある、と解釈することができます。
2つめのポイントは、末尾が「生ずる被害」で結ばれている点です。
自然災害=被害、という少し変わった定め方がされています。被災者生活再建支援法は、結果生じた「被害」に着目している法律なんだ、という法の趣旨が伺われます。
以上を合わせると、糸魚川大火の被害は、長時間継続した異常な強風&フェーン現象という自然現象によって生じた被害だから、被災者生活再建支援法2条1号の自然災害に該当する、と解釈することができるはずです。
被災者生活再建支援法1条は、この法律の目的が、「生活の再建を支援し、住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資すること」であると定めています。政府には、ぜひ被災者生活再建支援法の目的に沿った法解釈をしていただき、糸魚川大火に適用するという判断をしてほしいと思います。