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コラム
2018.01.15
コラム

大好きなドラマ「99.9」のセカンドシーズンが始まりました。

 

ドラマとして面白のはもちろん、細部の作り込みへのこだわりが、刑事弁護に携わる弁護士からみてもすごい作品だったので続編に期待していました。

結論から言えば、セカンドシーズンも期待通り、いや期待以上でした。弁護士目線で少し解説してみます。

 

1 アプローチがリアル

深山弁護士(松本潤さん)の調査は、無罪という結論を導く合理的な説明(ケースセオリー)探しから始まります。最初に深山弁護士がしたのは被告人から話を聞くことであり、次にしたのは手元にあった証拠を一つひとつ確認することでした。

実際の弁護活動でも、最初に弁護人の手元にあるのは、「被告人から聞ける話」と「検察官から開示された証拠」の2つだけです。
※その他の証拠が途中から出てきますが、その前に「検察官への証拠開示請求」がしっかり描かれているのもリアルです。

そして、この2つのうち、まず被告人から話を聞く方から行うことが多いです。これは、先入観を持たずに、そして被告人の目線から証拠を見るために弁護人がするアプローチです。

 

元裁判官という設定の尾崎弁護士(木村文乃さん)に対し、深山弁護士が「裁判官は最初から有罪を前提として証拠を見ていると」批判する場面がありました。実際も刑事弁護をしていると、裁判官に対してそう感じることは多いです。

 

 

 

 

2 法廷でのやりとりがリアル

さて、99.9の凄いところは、「こんなところを細かく描いても法曹三者以外には伝わらない」とツッコミたくなるようなところまで、細かく作り込まれているところです。だからこそ伝わってくる臨場感でしょうし、その細部を、視聴者の方に伝えたいからこそコラムを書いているわけです。

例えば、法廷における深山弁護士の発言や動作の一つひとつが非常にリアルに描かれています。ここまでしっかりされているドラマはほとんどありません。

 

例えば、「ホヤぼーや」と一緒に写っていたOLに対する反対尋問の場面で、深山弁護士は「証言を明確化するため」と告げてから写真を示しています。
他方、男性従業員(真犯人)に対する反対尋問の場面で深山弁護士は「記憶喚起のため」と告げて録音データを再生しています。セリフの違いには理由があります。

 

OLへの写真掲示は刑事訴訟法199条の12に基づく提示で、男性従業員への音声データは刑事訴訟法199条の11に基づくものだからです。

(記憶喚起のための書面等の提示)
199条の11 訴訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)又は物を示して尋問することができる。

(図面等の利用)
199条の12 訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面、写真、模型、装置等を利用して尋問することができる。

 

 

この違いを忠実に描くために、わざわざ深山弁護士のセリフを変えているわけです。

 

第1話のハイライトは、深山弁護士が、証人による証言が信用できないこと、平たく言うと嘘であることを示す場面でした(こういった行為を法律用語では「弾劾」といいます)。

 

このステップが非常にリアルでした。深山弁護士は、まず嘘を話させています。そして、嘘を話させた上で「間違いありませんか?」と毎回念押しをして、「間違いありません」と言わせています。

これは、アメリカの法廷弁護技術NITAでも教わる、弾劾(その証拠が信用できないことを示すこと)のための重要なステップです。念押しすることで、「言い間違えた」等のいいわけを先回りして封じているわけです。

 

 

そして、いざ信用できないことを裁判官・裁判員に示す場面で、深山弁護士は弁護人席を離れて、証人の真横、つまり裁判員から見える位置に移動しました。これもリアルです。

移動という動作を見せ「時間」もつくることで、裁判官と裁判員に対し、場面の変化を空気として見せ、証言台の横に移動することで注目を自分(弁護人)に集めるわけです。これは、「ドラムを鳴らせ」とも表される法廷弁護技術のテクニックの一つです(ダラララララ、ダン!というドラムです)。

このように弁護人が動くことで、裁判官と裁判員に、「ここからが見せ場ですよ」「よく覚えて下さいね」と伝え、それを見せることで、記憶に残りやすくしているわけです。

法廷弁護技術の研修用ビデオかとツッコミたくなるぐらいリアルで、そのリアルさを損なわない限度で笑いを挟んでいるのが絶妙です。
※実際も、パソコン操作に慣れていない弁護人は結構いて、再生までに時間がかかることがあります(笑)

 

 

3 法曹三者の描き方がリアル

法曹三者(裁判官、検事、弁護士)の描き方もリアルです。尾崎(木村文乃さん)の設定が元裁判官であることからもわかるように、恐らくセカンドシーズンで描きたい部分の一つが、法曹三者の刑事裁判における違いなのだと思います(裁判官への批判的メッセージ?)。

 

例えば、元裁判官の尾崎弁護士(木村文乃さん)は、手元にある証拠(書面)だけ分析し、最初から被告人=犯人だという結論を出し、その結論に「どっぷり」つかっています。

親友のお父さんであるにもかかわれらず、「間違いなく殺人犯だ」と思うぐらいにです。いかにも、元裁判官らしい思考です。

他方、深山は、まずは被告人から話を聞こうとしています。そして、証拠の一つひとつに疑問の目を向け、一つひとつをそのとおりに受け止めてよいかを愚直に確かめるという行動をとっています。そして、それが済むまでは真実は何もわかっていないと考えています。さすが腕利き刑事弁護人という感じですし、弁護士としてもハッとさせられる姿勢です。

 

 

また、法廷での法曹三者のやりとりもリアルです。

例えば、深山が法廷で、噴水の音が入った動画を出そうとする部分がそうです。普通の裁判ドラマでは、何のやりとりもなく「切り札」となる証拠が「後出し」されていますが、実際の裁判では、そんなことはできません。必ず異議が出ます。

検察官から「事前に請求されていない」「関連性が不明だ」と二つの異議を述べられていたのがその場面です。この異議に対し、深山弁護士は、礼儀を尽くし事前に出せなかったことを詫びた上で、「事前に請求できなかった理由」と「重要な証拠であり今証人に示す必要がある」ことを述べています。
※発言の信用性を損なわないために、法廷では「紳士」であれという教えにも沿った行動です。

 

これを受けて裁判官が、異議の裁定を頭の中でした上で、「まずは検察官に開示を」と対応している場面も非常にリアルです。これらのやりとりは、いずれも刑事訴訟法と刑事訴訟規則に準拠したもので、一つひとつのセリフの言い回しが、法律に基づくものになっていました。

ここまでリアルにやっても、法曹三者以外の視聴者には全く伝わらないだろうに、、、さすがです。細部の作り込みが、法廷の場面における緊張感に繋がっているのだと思います。

 

ちなみに、最後のテロップの中に、著名な刑事弁護人であり、法廷弁護技術の著名な講師でもある高野隆弁護士のお名前がありました。2話目以降もリアルなやりとりが描かれると思います。

 

もちろん、一つの事件にここまでの時間と労力をかけられるか、、、というところや、画像処理のところなどは、ドラマならではだと感じますが、以上のとおり99.9はセカンドシーズンも期待できそうです。

 

 

 

4 プロレスと被災地への愛

他にも、ちりばめられた「細かいプロレスネタ」も健在でした。まさか、実際に新日本プロレスの公式HPでコラムを書いているアジアン馬場園さんをパラリーガル(弁護士の秘書)に起用するなんて(笑)。プロレスファンのハートも鷲掴みです。

 

東日本大震災の被災地である気仙沼市のゆるキャラである「ホヤぼーや」を起用するところも心憎いと感じました。熊本大分関連の商品もたくさん出てきていましたね。

ドラマのクール中に3月11日を迎えるからか、被災地への愛も感じました。

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