『「災害関連死には500万円を支給」遺族に手篤い災害弔慰金が、むしろ遺族を傷つけてしまう理由-本来の趣旨とはかけ離れた運用-』
【2022年3月9日(水) PRESIDENT Online】
東日本大震災後、岩手県にて災害関連死の審査委員として100件以上の災害関連死の審査に携わってきた当事務所の弁護士小口幸人が、先日取材を受け、その記事が掲載されましたので報告致します。
「災害関連死」とは、災害弔慰金の支給等に関する法律において、災害と死の間に法律上の相当因果関係が認められるケースを指します。例えば、被災後に通院することが出来ず、持病やケガが悪化し亡くなったり、避難所で感染症にかかって命を落としたり、家族を失ったショックで精神疾患等を患い自殺に至ったケースなど、かなり様々です。
ただ、ケースは様々であっても、死に至ったケースそれぞれが、現在の制度が及ばなかった結果。制度の穴を埋めるためには、災害関連死ひとつひとつに、「どうしたら救えたのか」を検証し、教訓としていくことで、制度改善へと繋げることが何よりの弔いになると、小口は考えます。
その上で、小口は記事の中で、
災害関連死を検証し、教訓として制度改善に活かそうという視点が、現在の運用には決定的に
欠けている
と指摘します。
昨年、東日本大震災の発生から10年を迎えた頃。
3.11の被災自治体のいくつかで、審査会の議事録など、災害関連死に関わる資料が廃棄されているとの報道がありました。この報道に触れての上記コメントです。
また、弔慰金が一律500万円または250万円である現在の制度について、記事の中で小口はこう提案します。
関連性の程度に応じて弔慰金の額を調整出来るような制度にすることも一案なのだろうと思い
ます。(中略)関連死に認定されなかった遺族と、認定された遺族が狭いコミュニティの中に共
存しうる今の状況を合わせ考えると、弔慰金の額を関連性の程度に合わせて調整できる方法に
することは、あり得る選択肢だと思います。
近い将来、大きな災害が起きると言われています。
そうでなくても、自然災害は繰り返され、今後も必ず発生します。
ここ沖縄でいうと、年々台風での被害が拡大傾向にあり、また大雨による被害も毎年起こっています。
県内自治体では、地域計画防災が練られていますが、残念なことにいくつかの自治体では、数年前に策定された以降、見直しや改定等がなされていない状況もあります。
どうしたらよかっただろうか。
どうしたら一人でも多くの命が助かるだろうか。救えるだろうか。
こう思いを馳せること、検証することは災害関連死の審査に関わらず、広く私たちの生活に言えることであり、そして行政に限らず、私たちも、毎日の生活の中で繰り返し考えなければならないことだと思います。
ひとつひとつの命、一つ一つの災害、事象、事故、事件で、繰り返し繰り返し制度を見直し、改善していく。
そして、安心した未来を子ども達に繋げていくことが、現在を生きる私たちの「すべきこと」であると考えます。
《事務局》