先日、那覇市に対して成年後見制度利用支援事業(報酬の助成)における実施要綱の改正について申入書を出したところ、この度、那覇市より回答がありましたので報告致します。
<申入書を提出するに至った経緯>
・Aさんのケース
今回問題となったのは、弁護士小口が2018年より成年後見を務めるAさんのケースです。
那覇家庭裁判所より選任を受けて以降、Aさんの金銭の管理等の業務を行っており、そして毎年一定時期になると、那覇家庭裁判所に対して後見事務報告と報酬付与の申立を行ってきました。
さらにAさんは生活保護受給者であるため、成年後見の報酬を支払うための資力が十分にあるとは言えません。
そこで、那覇市成年後見制度利用支援事業(報酬の助成)を利用して、成年後見の報酬を賄ってきました。
そんな中、那覇市は令和4年の実施要綱改定により報酬助成の申請時に「後見登記等の登記事項証明書の写し(発行から3月以内)」の提出を求めるようになりました。
・登記事項証明書の写し(発行から3月以内)の提出を一律に求めることの問題点
後見登記には、成年被後見人等及び成年後見人等の氏名や住所、権限の範囲等が記載されており、一見、成年後見人等を確認するために必要な書類に思われます。
ただ、この登記は家庭裁判所の成年後見人等の選任や解任等の審判に基づいて、法務局においてなされているもので、つまりは、家庭裁判所の選任等の審判確定が元になっているのです。
片や、報酬助成の申請時には、家庭裁判所の報酬付与の審判の写しが必須となります。
これは、報酬付与の審判書に、成年被後見人等及び成年後見人等の氏名、住所、また報酬の対象となる期間及びその期間に対しての報酬額が記載されているためであり、成年後見制度利用支援助成事業を実施する自治体は、審判書記載の対象期間、報酬額の範囲内で報酬助成を行います。
ここであることに気付きませんか?
登記事項に記載されている内容と、報酬付与の審判書の内容は重なる点が多く、審判書で確認が済むケースがほとんどなのです。
さらに、那覇市成年後見制度利用支援事業要綱第3条2項には申請期限について、審判の決定日から起算して3月以内に行うものとする、とあります。
行政庁が行政行為を行う際、申請者以外の第三者、公的機関が作成した書類等に基づいて事実認定をすることは通常で、その際、3か月以内に発行されたものを求められることが多々あります。
それならば、3か月内に下された家庭裁判所からの報酬付与の審判書で、十分事足りているのではないのでしょうか??
※場合によっては、審判書のみでは助成申請の審査に確認が不十分になる事があります。
例えば、報酬付与を初めて受ける場合、審判書の報酬の対象となる期間が「就職の日から」と記されることがあります。この場合、登記にて選任の裁判確定日を確認する必要があることから、登記事項証明書が必要となります。
実際、いくつかの自治体の実施要綱等を確認したところ、主要な都市のほとんどが、申請時の登記事項証明書の提出について、添付なし、もしくは条件付き(上記※に記載した場合等は、登記事項証明書が必要)とされ、一律に求めるものではありませんでした。
・登記事項証明書を取得することの負担について
もっといえば、後見等の登記事項証明書は、無料で発行を受けられるものではなく、手数料が発生します。
元を辿れば、成年後見制度利用支援事業は、成年後見制度の利用に要する費用について補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難であると認められるものに対し、成年後見制度の申立に要する経費及び後見人等の報酬の全部又は一部を助成する事業であり、つまりは、成年後見制度を利用するにあたり、経済的な支援を必要としている方のための制度です。
その方々へ、必要以上の経済的負担を課すことは、紛れもなく本制度の目的に反する行為となります。
<申入れの趣旨>
上記経緯から、今回、那覇市に対して那覇市成年後見制度利用支援事業(報酬の助成)実施要綱第3条(7)を削除すること、その削除がされる前においても、同事業申請の際に、一律に後見等の登記事項証明書の写し(発行から3月以内)を求める運用を改めるよう申し入れました。
<那覇市からの回答>
申入書を提出して数日後、那覇市より「投書「申入書」について(回答)」が届きました。
その中で、
今回の申入れに対して、「本要綱第3条(7)の削除を行うこと」及び「改正後の要項の適用日」について、部内にて調整を行っております。今月中には改正の予定ですので、改めてご連絡致します。
との回答と併せて、
こちらの対応の遅れによりご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした。
との一文をいただきました。
<回答を受けて>
今回の一連の流れを受けて、些細な「?(はてな)」に、立ち止まってみることの大切さを痛感しました。
本当に必要なんだろうか?と改めて見直すことで、その重要性や必要性がはっきり見えてくるような気がします。逆もしかり。今回は、必要ではないものがくっきりと見えてきました。
困っている方をさらに困らせたり、負荷を負わせるのではなく、さっと手を差し伸べるような、そんな適正な制度が様々なシーンで多く広がっていくことを強く願います。
《事務局》