『改憲論議で焦点 重なる危惧に警鐘』『議会の歯止め 過信禁物』
【2024年12月6日 東京新聞・21面】
2024年12月6日東京新聞に、弊所弁護士小口幸人のコメントが掲載されましたので報告いたします。
先日3日夜、韓国にて大統領による非常戒厳宣言がされ、その後4日未明には非常戒厳の解除を表明。これにより韓国では政治的混乱が起こり、さらにソウル汝矣島(ヨイド)の国会前では市民団体によるデモなども起こっています。
この韓国の情勢を受け、改めて注視されるのが、国会で与党などが新設を求める「緊急事態条項」です。
国会で繰り広げられる改憲議論の大きなテーマの1つとされる緊急事態条項。
条文案では、
■大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会により法律の制定をまついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
■大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の三分の二以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
といった内容になっています。
これについて弁護士小口は、
「韓国の非常戒厳と、日本で議論される緊急事態条項は違いもあるが、今回の例を通じ、権力が暴走して乱用されうると再確認された。」
と指摘します。
一見、大きな災害や、異常事態が発生したときには、権力を集中させても仕方がないのでは?と思えるかもしれません。
しかし、万が一に備え、日本にはすでに災害対策基本法といった法律があり、また他の法律についても整備をすることで対処することができるようになっています。
求められるのは、憲法を改めることではなく、すでにある法や方法を見直し、整備すること。
国会議員の任期延長についても、求められるのは延長が可能になることではなく、万事が起こったときでも、選挙ができるシステムを作ることです。
歴史的にみると、戦前日本では、権力を集中させることで、乱用され、人権が侵害されることがありました。これを踏まえ、あえて設けられなかった緊急事態条項をわざわざ盛り込む必要はありません。
改憲を声高に言うのではなく、まず、すべきこと、本当に必要な事をもっと精査し、議論してほしいです。
≪事務局≫