弁護士には守秘義務があります。
弁護士に相談した事実や、相談内容が、承諾なくして外に出ることはありません。どうぞ、安心して相談してください。
弁護士法23条
弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
ただ、ときに少し面倒くさいことになることもありますので、コラムに書いて見たいと思います。
例えば、5月1日にAさんがCさんの件で相談に来たとします。
Aさんは友人のBと一緒に、Cさんから「カバン」を買っていました。Aさんは、このカバンが偽物だったことから、弁護士に「返金してもらえるか」を聞きに来たとしましょう。
続いて、翌日の5月2日に、Bさんが、相談に来たとします。
Bさんは多くの場合、「昨日Aが来たと思うんだけど、同じ件です」とおっしゃいます。
当然、弁護士としては、何のことだかわかっていますし、ほとんどの場合、ここで「ああ、Aさんが来ましたよ、同じ件ですね」と答えても問題は起きないのですが、守秘義務の観点からは「はて?」という顔をすることになります。
なぜなら、弁護士は、「Aさんから相談を受けた事実」を「秘密」にしなければならないからです。
Aさんから事前に直接お電話いただき、「後でBが相談に行くので、昨日私が話したことを前提に話を聞いて下さい」とでも言っていただけると、その電話で守秘義務解除の承諾をいただいて話を合わせることもできるのですが、それ以外の場合は「はて?」という顔をして、「Aさんが相談に来た事実」を秘密にすることになります。
例えば、Aさんが「Bさんの夫」に「弁護士に相談した」と話していましたが、Bさんには話していなくて、Bさんの夫に知られてもいいけれど、Bさんには知られたくなかった場合などを想像していただくと、おわかりいただけるでしょうか。
あるいは、Bと名乗っているのが実はCで、Aが近くの弁護士に相談しに行っていないか、探るために来た場合などを考えるとより分かりやすいでしょうか。
これと同じようなことですが、相談者の方から「友人のDが先生に相談して解決してもらったと聞いたので相談に来ました」と言っていただいたときにも、事前にDさんから教えていただけていないときは、「キョトン」とした表情をするようにしています。
ほとんどの場合、「ああ、Dさんのご友人ですね。あの裁判はうまくいきました」と話を合わせても問題は起きないのですが、そうしないようにしています。
その理由は、例えば、Dさんは相談だけでなく、裁判まで事件を解決していたけれど、裁判までしたことを知られたくないことからEに「相談したらすぐ解決したんだ」と嘘を話していた場合を想像してみてください。
この場合、うっかり弁護士が「あの裁判はうまくいきました」と言ってしまったときには「依頼内容」の秘密が漏れてしまうわけです。
このように、弁護士は少し苦しいことが生じたとしても、厳重に秘密を守っています。秘密を守ることは、弁護士業務の核の一つ、コアバリューだからです。
逆に、安心して話せると思っていただけるとありがたいです。
余談ですが。少し大きな刑事事件が起きたときに、担当の弁護人を探すために、記者が法律事務所に「受任していませんか?」と電話をかけまくることがあります。このとき、受任していない弁護士は「受任していません」と言えるのですが、受任している弁護士は「お話しできません」と答えることになります。その結果、記者に「あ、この先生か」とバレてしまうことがあります。
そこで、そんな結果を避けるために、受任しているわけではないのに「お話しできません」と答える弁護士がいるとかいないとか(笑)