話題のドラマ99.9の第8話では、弁護士が逮捕され被疑者になる、というストーリーが描かれました。
「一度捕まって被疑者になってみたい」 これは、弁護士同士がよく話す、夢?です。
被疑者のつらさをリアルに知りたいし、取り調べも受けてみたいからです。
弁護士になる前の「司法修習」という段階で、取り調べをみたり、実際に取り調べをしたりもしますが、
それは検察の取り調べであって、警察のではありません。
日常的に聞く警察の取り調べは本当に酷いものでして、ぜひ体験してみたい、という話になります。
また、検察の調べでも、「否認事件」となると話は別のようです。容赦はしない、といった感じで、彼らも彼らなりの正義を実現するため「司法修習」でみたそれとは明らかに別のことが行われれています。被疑者被告人が異口同音に話す本気の取り調べを受けてみたい、ということです。
さて、ドラマは被疑者である深山(松潤)が弁護人に次々と指示を出すことで進んでいきます。
そのときの決め手は「そっち(外)にいるよりこっち(中)の方が情報が入ってきます」というセリフでした。
実際に「情報」は弁護人より被疑者・被告人が持っています。
なぜなら、
・事件について体験を通じて知っている
のは当然ですが、
・警察や検察の取り調べでぶつけられる「質問」や「資料」の中に情報があるからです。
弁護人が証拠をみられるのは、基本的に起訴された後、検察が開示したものだけです。
例えば取り調べの中では、「Nシステム」といって、ナンバーを読み取る資料を見せられたりしますが、いざ裁判になるとこういった資料は出てきません。開示を求めても、公には「Nシステム」はないことになっているので、開示されないのです。
そこで弁護人は、被疑者・被告人との面会のときに、
・どういうことを警察や検察から聞かれているか
・どんな資料を見せられたか
を尋ねます。そこから、捜査機関側の見立てと、捜査機関側が根拠にしている証拠にどんなものがあるかを探るためです。
もし弁護士が逮捕されたら、ドラマのように被疑者が弁護人に指示を出しそうな気もします。
もう一つ、深山(松潤)が恨みをかった傷害事件の方についてです。
恋人が有利な証言をしたい、と言えば、普通弁護人は証人申請をします。被告人が望めばなおさらです。しかし、その証言の内容が本当かは、批判的に検討します。後で嘘が発覚してしまえばマイナスだからです。検察の反対尋問に耐えられるか、追加捜査をされて証言に反する証拠が出てこないかを心配します。
検討の結果、証言が嘘だとわかれば、被告人のリクエストがあったとしても、弁護人は証人申請しません。
理由は二つ
・一つ目は、その証言を法廷に顕出してもプラスにならないから
・二つ目は、弁護士には消極的真実義務といって、嘘だとわかっていることを、積極的に立証してはいけないからです。
ドラマ99.9は、確かにドラマ用にアレンジはされていますが、
弁護士からみても面白いドラマです。続きも、続編にも期待したいです。
ちなみに、今回のドラマで実際と違うところは、
・取調中、検事が被疑者のリクエストに応えて犯行再現はしてくれない(笑)
・面会のときの透明なしきり(接見室のアクリル板)はあんなに綺麗ではありません^^
・ipadを接見室に持ち込んで動画を見せると、中の職員(刑務官)が文句を言ってきます。ときには面会が中止されることもあります。ご覧のとおり必要な弁護活動なので、文句を言ったり面会を中止させるのは違法です。
・傍聴席でハチマキでだめです(笑)