南山法律事務所
098-996-5104
沖縄県那覇市国場979番地4(国道507号線沿い)
定休日:土日・祝祭日
南山法律事務所
098-996-5104
面談相談予約
メール無料法律相談
〒902-0075 沖縄県那覇市国場979番地4
コラム
2016.06.20
コラム

ドラマ99.9の最終話では、いま考えられる最も重大な問題が提起されています。

それは、DNAの証拠への過剰な依存です。
DNA鑑定への信用性は確かに上がっています。

えん罪であった足利事件のときと、今のDNA鑑定は「レヴェル」が違います。

 

しかし、今回のドラマでも描かれていますが、DNAを用いて、誰かをはめること、犯人にしたてることは、あまりにも容易です。

今回は「血液」だったので少し難しそうに見えますが、髪の毛や唾、爪でもはめることができます。それこそ、例えば精液でも使ってはめられたら、一瞬でわいせつ事件の犯人にされてしまいます。

 

さらに、DNA鑑定の結果を用いて、自白を迫る取り調べも、実際に行われています。

DNA鑑定、といういかにも強そうなものを示し、

おまえは犯人だ、記憶違いじゃないのか、記憶がすっぽり抜けているだけじゃないのかと、連日連日迫り続けるわけです。

ある意味、洗脳していく課程にも近いと感じることがあります。熱意があり腕がある弁護士がついていれば、その洗脳に染まらないよう防御をすることはできますが、そうでなければ自白をとられてしまいます。あなたであってもです。

 

そして、仮に自白がとられなかったとしても、本当に残念なことですが、

運良く心ある裁判官にでもあたらない限り、

「DNA→有罪」という結論になります。一見客観的だからこそ、それぐらいDNAの証拠は強いです。

 

弁護人が「はめられたんだ」ストーリーを示したとしても、今回のドラマのように、弁護人が真犯人でも見つけない限り(至難の業ですが)、相手にされません。

「はめられた」とか「証拠が改ざんされたんだ」というような主張を法廷でしても、

ほとんどの裁判官は「また弁護士がアホなことを言っている」という冷ややかなリアクションしか示しません。

 

実際は、ドラマで描かれたようにDNAを用いて誰かをはめることや、

誰かを犯人にしたてることは容易なのに、「そんなことは起きない」、

そんなドラマみたいなことは自分の法廷では起きないと、ほとんどの裁判官は高をくくっています。

 

さらに、今回のドラマはあと二つも重大な問題を描いています。素晴らしいストーリーだと思います。

 

一つは、アリバイの主張が後出しじゃんけんでつぶされることです。

これは、実際の実務でもよく起きています。

警察、検察は強大な捜査権力を持っていますので、補充捜査をすることでアリバイをつぶしたり、疑わしいことにしてきます。他方、弁護士にできることはたかがしれていますので(ドラマでは土下座で無力さが描かれていますよね)、

アリバイの主張がつぶされることは実際にもあります。だからこそ、弁護人は「いつアリバイの主張を出すか」を悩みます。

また、今回のドラマのように、訴因の変更という方法でつぶされることもあります。酷いときは、裁判官が「訴因の変更」を検事に促すことすらあります。

 

そして、もう一つ描かれているのは、松潤が弁論で語っていた有罪率99.9%の問題です。これにも二つの側面があると感じています。

一つ目は、裁判官は、日々有罪の判決を書き続けるという問題です。

日々向き合う有罪事件の中で、まれにやってくるえん罪を見つけるのは至難の業です。人には慣れ、というものがあるからです。

例えるならば、日々大量生産される製品の中から、たった一つの欠陥品を見つけるように難しいということです。

 

もう一つの側面は検察や警察の姿勢の問題です。

検察は、真犯人を処罰し、無実の人を罰しない、という使命を負っています。

そしてその使命は、有罪率が99.9%であるからこそ、真犯人だけを起訴するという使命に変わります。

 

その結果として、この使命は「起訴をした事件は有罪にじなければならない」という使命に化けます。

メンツの面でもそうなのでしょう。強大な権力を扱うからこそ、過ちは許されない、という考えです。

 

起訴をしてしまったら、その後、疑いを感じさせる主張が出ても、証拠が出てきても、
彼らは有罪にするための主張や補充捜査に専念します。その疑念は頭から消すしかないわけです。

 

さらに警察は、起訴をしなくても、一度逮捕をしたら有罪にすることに固執します。
逮捕の事実は新聞に報じられ、その瞬間にその人の人生は大きく変わってしまうからです。

過ちは許されないからこそ、逮捕した以上有罪にするという使命に化けます。

 

結局、彼らは、自分たちだけでは立ち止まることができない、ということです。これは構造的な問題です。

 

10人の真犯人を逃すことがあっても、1人の無辜の者を罰するなかれ。疑わしき派被告人の利益に。

こういった刑事裁判の鉄則は、残念ながら守られていません。全くといっていいほど守られていません。本当に不都合ですが、これが真実です。

 

それはすなわち、他人事ではなく、明日あなたが、あるいはあなたの大切な人が、無実の罪で捕まるかも知れない、ということです。

 

99.9は、刑事弁護に力を入れている弁護士からみても素晴らしいドラマでした。

ぜひ続編をお願いしたいと思います。

 

最新記事
カテゴリー
アーカイブ