『参院の緊急集会 位置づけは』『緊急事態条項 変遷する議論』
【2023年6月27日 朝日新聞】
先日6月21日に閉会となった第211回通常国会中、衆議院・参議院ではそれぞれの憲法審査会が開催され、議論が展開されました。その中の1つ、総選挙が長期間実施できないような緊急事態が発生した際の国会対応についての憲法改正論議について、朝日新聞では特集ページが組まれ、その記事の中で、弁護士小口のコメントが掲載されましたので報告致します。
緊急事態条項をめぐる改憲の議論について、本特集記事では、過去に遡って、議論の変遷についての解説がされています。
・自由党憲法調査会が1954年にまとめた「日本国憲法改正案要綱」には、内閣の権限とし
て「戦争及び非常事態の宣言」が盛り込まれ、「国会の閉会中、緊急事態に際して内閣は法
律に代わるべき命令を出し得ることとする」と明記
・50年代から60年代にかけて開かれた内閣の憲法調査会でも議論になった
・東日本大震災翌年の12年に公表された自民党の憲法改正草案も、首相が緊急事態を宣言す
れば、国会を通すことなく、内閣が法律と同じ効力を持つ緊急政令を作ることが出来るとい
う内容
・この自民草案には、ワイマール憲法48条を想起させるという批判が強まった ~中略~ 48
条が乱発され、ナチス独裁に道を開く大きな要因となったからだ。
・そうした中で17年頃から浮上したのが今議論になっている大規模災害時などの国会議員の
任期延長論だ。~中略~ 緊急時の権力集中ではなく、任期延長は緊急時の国会による行政監
視機能の維持のために必要だと、理由付けも変わった。
これに対し、弁護士小口は「自民党は行政監視機能の維持を掲げているが、肝心の臨時国会召集要求が内閣に無視されている問題を放置しており、矛盾している」と指摘します。
この記事を読んで衝撃だったことが、1954年、2012年いずれの草案についても、内閣が「緊急事態だ」と言えば、国会での審議を経ずして法律と同じパワーを持つ内閣命令が発布されてしまう、という内容が含まれていた事。法権力を集中させるような、ゾッとするような草案が、約50年余も主張され続けていたという事実です。
数十年にかけて議論が続けられると、その議論の目的や理由が変わっていくことは当然あったとしても、議論のスタートが権力集中を目的とするものだったとなると、現在の理由付けも「本当にそのため?」と思ってしまいます。そしてそう思うような状況(臨時国会召集を求める声を無視するなど)も現に起こっており、さらに疑問は強まります。
誰のための政治なのか?
誰のための改憲なのか?
このテーマの記事を読むと、毎回「???」が残るばかりです。
《事務局》